最近、巷で宅内ネットワークのマルチギガ(2.5Gbps)化が流行ってますね!
ワタシもこのブームに乗り遅れまいとハイコスパのマルチギガスイッチ「プラネックス製 FX2G-05EM」を買っていたのに、使い始めるまで重い腰を上げられずにいた。
その原因は、サブPCのNICがマルチギガに非対応だったから。
非対応機は1Gbpsでリンクするからそのまま使い続ければいいんだけど、なんだか中途半端感が拭えなくてこの問題を解決してからネットワーク構成をアップグレードしようと考えていた。
さて、問題のサブPCはNICが交換できないタイプなので残すアップグレード方法は1つ。USB接続のマルチギガ対応LANアダプタを使うことだ。
だがしかし、USB接続のLANアダプターは4,000円前後する。さらに、どれもこれもAmazonのレビューが芳しくない。筐体が発熱するとか動作が安定しないとか、マルチギガあるあるである。
そんな矢先、レビュー無しではあったが良さげなマルチギガ対応LANアダプタを見つけた。
このLANアダプタ「AUCL-V025G-U31」の着目すべき点は、コントローラチップに「RTL8156B」を使用していること。
マルチギガのLANアダプターは「RTL8156」もしくは「RTL8156B」のチップを使用しているケースがほとんどだが、前者「RTL8156」のコントローラチップは発熱が大きい問題があるようだ。
一方の「RTL8156B」は発熱が少なく、安定して動作するとの情報がAmazonレビューやSNSで目に入る。
安定して動くという「RTL8156B」を採用したマルチギガLANアダプターで、このアドテックのアダプタは2,790円と怪しむくらいの安価設定である。ライバルのプラネックスやIO-DATAの同等製品が3,800円する中で、1,000円も安く買えるのはアツすぎる。
さらにAmazonあるあるの怪しい中華製ではなく、国内メーカーであるアドテックが取り扱っているからサポート対応もきっと安心。
という訳で実際に購入して一通りの測定をやってみた。
サブPCのUSB Type-CポートにLANアダプタを挿入すると、アダプタ本体の緑と橙のLEDランプは点灯するが、LANケーブルを挿してもネットワークにつながらない。
デバイスマネージャを見るとNICそのものを認識していない様子。取扱説明書では「ドライバなしで使えるよ」とのことなので使い方も間違っていない。
ということで早速アドテックさんに症状を問い合わせてみたところ、初期不良の可能性が高いようで交換案件になった。
不良品を指定住所に送ってから交換品が返送されてくるまで3営業日ほど。めちゃくちゃ対応良い。さすが日本。もちろん、交換品で届いた品はちゃんと使えた。
LANアダプタ「AUCL-V025G-U31」の見た目は至ってシンプル。アルミ製の筐体で放熱の面で有利だし、全く安い製品には見えない。ケーブル長は14cm。柔らかめで取り回し良好だ。
安いネットワーク製品だと、LANの差込口に緑と橙のLEDインジゲータが無かったりするが、この製品にはちゃんとついている。
LED点滅の様子で認識している伝送速度(2.5Gbps/1Gbps/100Mbps)がわかるので便利だ。2.5Gbpsの場合、橙色が点灯 & 緑色が点滅するようになっている。
PCでネットワーク帯域幅を測定するための定番ソフト「iPerf3」で100GBのデータを転送した際の速度の変化を見てみよう。
> .\iperf3.exe -c <NASのIPアドレス> -n 100G
Connecting to host 192.168.**.**, port 5201
~略~
[ ID] Interval Transfer Bitrate
[ 5] 0.00-362.00 sec 100 GBytes 2.37 Gbits/sec sender
[ 5] 0.00-362.03 sec 100 GBytes 2.37 Gbits/sec receiver
iperf Done.
100GBのデータ転送がわずか362秒だ。これまでギガビットイーサを使ってきた感覚からすると驚くほど速い。ただし、この数字はストレージにデータ読み取りや書き込みをした速度ではないから、実際のデータコピーはこんなに早くならない。あくまでネットワーク上の実効値として見る必要がある。
iPerf3実行中の帯域幅をグラフにしたものがこちら。
ほぼ水平で分かりづらいグラフになってしまった。終始2.37 Gbits/secで安定した通信ができていたことがわかる。ウワサどおりRTL8156Bコントローラチップの安定性が表れた結果だ。
気になる発熱はどうか。測定中にLANアダプタ筐体を手で触って何度も確認したが、温かいと感じたことはなかった。
本来であれば熱電対温度計で表面温度を測りたい。だけどそんな高価なものを持っておらずレビュアー失格。ということでワタシの敏感な肌感覚では「発熱は分からないくらい無かった」と報告する。
iPerf3で長時間の通信テストをしたとき、必ず49秒でエラーが発生してテストを完了できない事象が起こった。
> .\iperf3.exe -c <NASのIPアドレス> -n 100G
Connecting to host 192.168.**.**, port 5201
~略~
iperf3: error - unable to send control message: Bad file descriptor
調べてみると既知のバグのようだ。GitHubでバグ報告されていた。
iPerf3の最新版ではこのバグが解消されているが、iPerf3公式で配布しているWindows向け実行ファイルは3.1.3(2016年)で更新が止まっていて、バグが残った状態になっているとのこと。
解決方法として、+BudManという有志がiPerf3の最新ソースからビルドしたWindows向け実行ファイルを利用するよう紹介されている。
このiPerf3の実行ファイルを使用すると49秒のエラーがなくなるので、参考情報として残しておく。
CrystalDiskMarkを使って、マルチギガ(2.5Gbps)とギガビット(1Gbps)のネットワークを介してディスクの読み書き速度がどれだけ変化するか確かめてみた。
▼ SSDに対するRead/Write結果
両者を比較するとシーケンシャルの読み書きで大差がついた。
マルチギガネットワーク環境で計測したQ8T1のReadは296.42MB/sとなっているが、これはiPerf3で計測した帯域幅と一致する。
296.42 MB/s × 8 = 2.37 Gbps → iPerf3の計測値と一致
SSDを搭載したNASと大容量ファイルをやり取りする場合は、マルチギガ環境でもネットワークがボトルネックになってしまう。SSDの性能を活かしたいなら10Gbpsへの移行も検討すると良いだろう。
一方ランダムアクセスの結果ではネットワークによる性能差が出なかった。SSDの性能がボトルネックとなってしまっている。これはSATA接続のSSDを使っていることが原因なので、M.2のSSDへ変更すればより快適になる。
ただM.2対応の最新NAS高いンデスヨー。まだまだ買えません。
▼ HDDに対するRead/Write結果
NASのデータ保存先はSSDよりも大容量で安価なHDDをもっぱらメインに使っている。よってワタシにとってはこっちの結果が重要だ。
HDDへのアクセスでもシーケンシャルの読み書きで大差がついたが、Write側はHDDのアクセス速度がボトルネックとなっていてマルチギガの性能を活かせていない。
大容量ファイルの読み込みばかりしていれば性能差を感じられるが、もちろん書き込みも行うのでNASがHDDのままだとマルチギガネットワーク環境が活用しきれない結果に。
NAS内のアクセス速度改善が課題だな。思い切ってHDDを捨ててSSD化するか、SSDキャッシュを使うかの選択肢だけど、SSDの価格も安くなってきたのでオールSSD運用に構成変更しても良いかも。
USB Type-C接続のマルチギガ対応LANアダプタ「AUCL-V025G-U31」を導入したことで、安価に自宅のマルチギガネットワーク化を果たすことができた。
他社製品より1,000円近く安いのに、安定して稼働するこのLANアダプタはお買い得だと思う。
NASへの通信速度がこれまでの1Gbpsから2.5Gbpsへアップしたことで、今度はHDDストレージのアクセスの遅さがボトルネックとなって目立つ結果に。
ストレージ沼とネットワーク沼に片足つっこんでますな