トップ画像は我が家の冷蔵庫上でWi-Fiルーターと格闘したときの1枚である。
光コンセント、なんでリビングの真ん中にあるん?
古い賃貸マンションだからか、固定電話のモジュラージャックと光コンセントがリビングのど真ん中にあり、それに従うようにONUと無線LANルーターがリビングのベスポジに鎮座している。
そのためONUやルーターを置いているリビングAから、PCやNASがあるリビングBまで有線LANを延々と張ることがこのうえなく億劫で、苦肉の策としてTP-LINKの無線LANルーターと中継機を使ったメッシュWi-Fiでバックホール回線を構築していた。
バックホール回線の構築は、リビングAの無線LANルーター(親機)と隣のリビングBの中継機(子機)をメッシュWi-Fiでペアリングするだけでよく、あとは中継機のLANポートを使ってリビングB側で有線LANネットワークを組めば良い。
しかしWi-Fiを間に挟むため、子機側から親機側の端末まで帯域を測定するとせいぜい600 Mbpsしか出ない。インターネット回線は時間帯にもよるが650 Mbpsは出るので、リビングBの端末からみるとWi-Fiバックホールがネット回線のボトルネックになっていた。
それで安易に思い立ってしまった訳だ。子機をアップグレードすればWi-Fiバックホール帯域を改善できて、ボトルネックが解消するんじゃない?
ルーターを買い替えたのにはもう1つ理由がある。
リビングAから隣のリビングBまでのWi-Fiバックホールは次の機器でメッシュ構成していた。
- 親機:TP-LINK Archer AX73
5GHz:4804Mbps & 2.4GHz:574Mbps - 子機:TP-LINK RE705X(Wi-Fi中継機)
5GHz:2402Mbps & 2.4GHz:574Mbps
TP-LINKのArcher AX73はコスパが非常によく、過去のブロクでも紹介した。もう4年も前か。
ただ、TP-LINK製ルーターの仕様に、アクセスポイントモード/AP(ブリッジモード/BRともいう)ではメッシュWi-Fiが使えないという厄介な制約がある。
NURO 光のようにONUにルーター機能が備わっていると、無線LANの動作モードをAPモードにしてブリッジ接続するしかなく、必然的にTP-LINKのメッシュ機能が使えない。
・ TP-LINKのDECOシリーズならAPモードでもメッシュWi-Fiが使えるよ
・ TP-LINKのArcherシリーズのうちAX55だけはAPモードでも例外的にメッシュWi-Fi(TP-LINKのOneMeshではなくEasyMesh)が使えるよ
最近、自宅ネットワーク遊びが趣味になりつつあり、無線LANルーターのルーター機能をオフにして、APモードで使いたいという欲求が強くなってきた。
ということで、APモードでもメッシュWi-Fiが使えるBUFFALOのルーターに乗り換えたわけだ。
ちなみにAPモードでもメッシュWi-Fiが使えるのはBUFFALOだけでなく、NECやASUS、NETGEARといった主要なメーカーの無線LANルーターでも使えるようだ。TP-LINKだけOneMeshという独自メッシュを用いるがためにAPモードとメッシュ機能が併用できない仕様になっていると想定できる。
ボトルネックになっているWi-Fiバックホールの増強という名目上、本音を言うとMLO(Multi-Link Operation)機能によって帯域幅が大幅に広くなったWi-Fi 7対応機種が欲しかった。
だけどWi-Fi 7 対応機種はどれも価格が高い。メッシュで構築するために2台揃えるとなると、安くとも4万円以上もの出費を伴う。それに本体が大きくて置きどころにも困る。
さすがに自宅のWi-Fiに4万円強は苦しいということで、Wi-Fi 6E に対応し、かつ比較的6E対応機種でも安価だった「BUFFALO WNR-5400XE6P」に白羽の矢が立った訳だ。
しかも2台組で最初からメッシュ構成でペアリング済みの「WNR-5400XE6P/2S」というお得なセットがあり、値段も3万円未満と手頃だったので買ってしまった。
▼これが2台セットのもの。単品×2台購入よりもお得に買える
なお、類似の製品モデルにWNR-5400XE6(2022年発売)があるが、今回購入したWNR-5400XE6P(2024年発売)はルータ動作のセキュリティ製品「ネット脅威ブロッカー2 プレミアム」の1年分のライセンスが付属しているかどうかの違いだけとのことだ。中身自体はWi-Fi 6Eが解禁された2022年発売の製品なので、真新しい設計は期待できないだろう。
今回、WNR-5400XE6Pを選んだ理由としてはこんなところ。
- Wi-Fi 6Eに対応
- WANポートが2.5GbE対応(LANポートは1GbEだけどね)
- アンテナ内蔵
- 壁掛け対応
この段階でWi-Fi 7ではなくWi-Fi 6Eの機種を選択してしまったことでお気づきの方もいるだろう。Wi-Fi 6EだからといってWi-Fiのネットワーク帯域はWi-Fi 6と変わらず最大2401 Mbps(理論値)で頭打ちである。
あくまでも現在では混線の少ない、かつDFSの発生しない6 GHz帯を使えるというメリットだけで、Wi-Fi 6Eでは帯域幅は改善されない。この時点で目的を見失っていた訳だが、ポチったときには後の祭りだった。
買ってからこの思い違いに気づいて、あぁやっぱり奮発してWi-Fi 7の無線LANにしておけばよかったな、と少し後悔もした。でもちょっと待てよ、リビング間のWi-Fiバックホールが300Mbpsと細かったのは5GHz帯の混線のせいかもしれない、6 GHz帯を使えば改善するだろう。それに中継機も高性能なモデルに変わるんだから。
と、いろいろ理由をつけ開き直っていた。
BUFFALO WNR-5400XE6Pの製品仕様について簡単に紹介する。これまで愛用してきたTP-LINK AX73と並べておく。
BUFFALO WNR-5400XE6P | TP-LINK Archer AX73 | |
---|---|---|
無線LAN規格 | Wi-Fi 6E IEEE 802.11ax 6 GHz IEEE 802.11ax/ac/n/a 5GHz IEEE 802.11ax/n/b/g 2.4 GHz | Wi-Fi 6 IEEE 802.11ax/ac/n/a 5 GHz IEEE 802.11ax/n/b/g 2.4 GHz |
無線LAN 最大転送速度 | IEEE 802.11ax の場合 6 GHz : 2401 Mbps (160MHz 2×2) 5 GHz : 2401 Mbps (160MHz 2×2) 2.4 GHz : 573 Mbps (40MHz 2×2) | IEEE 802.11ax の場合 5 GHz : 4804Mbps (HT160) 2.4 GHz : 574Mbps |
アンテナ | 内蔵アンテナ 計4本 6 GHz : 2本 2.4 / 5 GHz共用 : 2本 | 外部アンテナ 計6本 5 GHz : 4本? 2.4 GHz : 2本? |
有線LAN | 2.5 GbE WANポート× 1 1 GbE LANポート× 3 | 1 GbE WANポート× 1 1 GbE LANポート× 4 |
IPv6 IPoE対応 | ◯(メーカー対応表) | ◯(メーカー対応表) |
本体サイズ | W140 × H217 × D75 mm | W272.5 × H49.2 × D147.2 mm |
実売価格(購入当時) | 15,000円(1台あたり) | 12,000円 |
発売日 | WNR-5400XE6 : 2022年9月 WNR-5400XE6P : 2024年2月 | 2021年3月 |
WNR-5400XE6Pの外観と設置してみて感じたことをつらつらと述べる。

開けて気付いたことは「やっぱり大きいな」だ。Wi-Fi 5 → Wi-Fi 6の機種に交換したときも大きくなったのだが、今回のWi-Fi 6Eはさらに一回り大きくなる。これまでの2.4 G / 5 GHz帯のアンテナに加え、新たに6 GHz帯のアンテナを追加しているのだからサイズアップは仕方がない。





Internet Watchのインタビュー記事でも書かれているようにアンテナ性能をトレードオフに「置いてもらえるWi-Fi」を意識している。最近のトレンドだし、考え方には賛同する。
これまでNECやTP-LINKの無線LANルーター使っていて、だいたい10年ぶりにBUFFALOのルーターをセットアップしたせいかもしれないが、ワクワク感のない管理画面のUIに驚いた。


ここは個人的な趣味によるものかもしれないが、Wi-Fiの初期設定でSSIDを5つも出す必要あるのか疑問。
2.4 GHz / 5 GHz / 6 GHz で1つずつでいいんじゃないかな。わざわざ暗号化モードをWPA2・WPA3別々でSSIDを分けなくても、WPA2 / WPA3 Personal にしたほうが、ユーザーは悩まなくて済むんじゃないかな。
ご近所にBAFFLOのルーター持ちが多いようで、お陰さまでBuffalo-◯G-◯◯◯◯のSSIDが溢れかえっている。

後述するルーターの管理パスワードの仕様によって管理画面から締め出されてしまったので、親機・子機とも初期化する羽目になった。
どちらもマニュアルに沿ってリセットボタンを押せば初期化されるのだけど、ペア機購入のメリットだった「親機・子機でメッシュ設定済み」までリセットされてしまう。当然と言えば当然だけど。
それで初期設定からメッシュ設定まで一通りこなしたのだが、メッシュ設定は親機・子機を親子をLANケーブルで直接接続する必要がある。Wi-Fi 6Eを使ったメッシュ設定の場合はAOSS(WPS)ボタンで設定不可とのことだ。なんでじゃい。

- ルーターの管理者パスワードが今どき8文字までという制限あり
なのにログイン画面ではパスワードを8文字以上打てる(あるある)。よってログインできない地獄にハマる。

- UPnP機能が出荷時設定でON
UPnPは脆弱性報告が多いし、出荷時はOFFがいいのでは。UPnPをどうしても使いたい人だけONにすればいいじゃん
- Syslog転送機能あり
TP-LINKにはなかったSyslog機能があった。これはネットワーク好きには嬉しい。今度Syslogサーバを立ててログを取ってみよう。

親機と子機の有線LANにPCを接続し、Wi-Fiバックホール帯域をiPerf3を使って測定した。なお、旧構成・新構成どちらも同じWi-Fiチャネル(W56帯)を使って、親子機器の設置位置(木製の扉を1枚挟んだリビング間)も条件をあわせている。
Wi-Fiバックホール帯域 | (参考)親機 < Wi-Fi > PC | |
---|---|---|
【旧構成】TP-LINK 親:Archer AX73 子:RE705X | Wi-Fi 6 -> 596 / 593 Mbps | Wi-Fi 6 -> 486 / 483 Mbps |
【新構成】BUFFALO 親:WNR-5400XE6P 子:WNR-5400XE6P | Wi-Fi 6 -> 911 / 909 Mbps Wi-Fi 6E -> 537 / 535 Mbps | Wi-Fi 6 -> 632 / 630 Mbps Wi-Fi 6E -> 対応機器なし |
Wi-Fi 6で約300 Mbps ものスループットが向上した。ただ、同じWi-Fi 6で性能も変わらないのにここまで変化したのかが疑問でならない。思い当たるのは子機の性能アップくらいか。
しかし、Wi-Fi 6E(6 GHz)が期待とは裏腹に全然遅かった。せめて5GHz帯と同じくらいのスループットは出てほしかったのだが、扉1枚でここまで電波が減衰してしまうのだろうか。扉を開けて親子ルーター感の距離を近くすると5 GHzと6 GHzがほぼ同じスループットになるので、概ね、電波減衰のせいだろうと予測付けた。
この疑念を払拭すべく、スペアナ…ではなくWi-Fi 7 に対応しているスマホを使ってWNR-5400XE6P 2台によるメッシュ構成でのWi-Fi受信感度を確認したところ、6 GHzの電波減衰が想像以上に大きかった。

子機を設置したリビングBで測定した親機と子機それぞれの受信感度の数値なのだが、同じ機器から出力されている5 GHz と 6 GHzの電波なのに、受信感度が13 dB(親機)も違う。同じ部屋にある子機から出ている電波の受信感度も17 dBもの差がある。
スマホによる計測なので超ざっくりな電波強度しか分からないが、スマホをWi-Fi 6Eの無線LANに接続して家をウロウロしていると、Wi-Fiの扇マークの外周が1つ消えることがあるのだ。実は家が狭すぎるので、これまで決してフル扇マークだったのに新しい変化だった。
Wi-Fi 6Eだからといってスループットが不安定だったり途切れることはこれまでないが、5GHzよりか弱い帯域のネットワークを約3万円の機器代をかけて使うのは少し勿体ない気もする。狭いマンションだからWi-Fi 6Eでも電波強度を気にせず不満なく使えるが、これが一軒家だとカバーエリアがとても狭いのでは?と疑問になってしまう。
現状としては、5GHz 帯が混信している都市部の住宅やオフィスくらいじゃないとWi-Fi 6Eの明確な効果が出ないんだろうな。このあたりはInternet Watchがよく特集してくれるので、とても参考になる。
ここまでWi-Fi 6Eの製品や性能レビューになってしまっていて、アクセスポイント(ブリッジ)モードでメッシュを使いたいという真の目的を完全に忘れていた。
安心してください。使えますよ!
さいごに、WNR-5400XE6Pの本体デザインや壁掛けというコンセプトでは惹かれながらも、管理画面のUI/UXではTP-LINKに届かない感じがBUFFALOの少し残念な部分だなと感じている。
だけどWi-Fiバックホールのスループット改善(5 GHz帯に限る)やアクセスポイントモードでのメッシュ利用など、やりたかったことは達成できたので、終わり良ければ全て良し。この構成で他のネットワークいじりが捗るぞい!