以前、このブログで紹介したTP-LinkのWi-Fi6 ルーター「Archer AX73」(2021年3月発売)を購入してはや1年が経ったところ。この1年間で次々とIPoE対応のWi-Fi 6ルーターが発売されて、活気を取り戻しているように見える。
レビュー|IPoE対応のArcher AX73でどれほどWi-Fiは快適になるのか中でもTP-Linkの攻勢は凄まじく、ルーターのラインナップもさながら、家電量販店の売場で広々と販売されているのを目の当たりにすると、その侵食スピードゆえ恐怖を覚えるくらい。黒船が本気だしてみた、と例えてみたい。
そんなTP-Linkから愛機AX73を継ぐスペックを有する最新機種「Archer AX55」が2021年12月に発売された。
ふとした気の迷いからAX55を購入してしまったので、AX73との比較を交えながらレビューしよう。
今回は割とマジメなレビューになってしまった。キャラ作りって大変だなー
Archer AX55と比較用のAX73の製品仕様を並べて書いてみた。
Archer AX55 | Archer AX73 | |
---|---|---|
無線LAN規格 | Wi-Fi 6 IEEE 802.11ax/ac/n/a 5 GHz IEEE 802.11ax/n/b/g 2.4 GHz | 同左 |
無線LAN速度 (802.11ax接続) | AX3000 5 GHz:2402Mbps (HE160) 2.4 GHz:574Mbps | AX5400 5 GHz:4804Mbps (HT160) 2.4 GHz:574Mbps |
Wi-Fi範囲 | 目安:4LDK 高性能固定アンテナ × 4本 ビームフォーミング | 目安:4LDK 高性能固定アンテナ × 6本 ビームフォーミング |
有線LAN | 1ギガビットWANポート× 1 1ギガビットLANポート× 4 | 同左 |
IPv6 IPoE対応 | v6プラス DS-Lite (transix含む) | 同左 |
本体サイズ | 261.1 x 41 x 134.5 mm | 272.5 x 49.2 x 147.2 mm |
実売価格 | 9,000円 | 12,000円 |
発売日 | 2021年12月 | 2021年3月 |
スペック比較表では5GHz帯の無線LAN速度がAX73の半分となっている点が気になると思うが、ルーターと端末が1:1で通信するときにはまず性能差が出ない。多くの端末をWi-Fiルーターに同時接続したときにAX55の方が遅くなりやすい。それくらいの目安で考えて良い。
特筆すべきはAX73とAX55どちらも国内のIPoE(IPv6)接続に対応していることだ。
自宅のネット回線は「楽天ひかり」のためDS-Lite(transix)対応のルーターが必須なのだが、2020年は対応機器が数えるほどしかなかった。いまは海外勢ではTP-Link製を筆頭にルーターの選択肢が増えてきており、素直に嬉しい。
さらにこのAX55は、性能のワリには実売9,000円という破格の値段設定だ。
AX73とAX55、この2ラインナップが揃うと、10台以上の無線LAN端末を接続するネットワーク環境では「AX73」、それよりも少ない端末数の場合は「AX55」というように、接続台数のニーズで選ぶのが良いだろう。あくまで端末の接続台数は目安だが、AX55は10台程度の端末を余裕で捌けるスペックを有している。
AX55の開封後、早速やってみたのが、フラッグシップモデルAX73との比較である。
はじめに感じたことが、「このサイズでAX73と性能が大きく変わらないの?ほんとかよ」と疑うくらい小さいことだ。
コンパクトだ!小さい!と連呼すると誤解されるといけないので先に言っておくと、TP-Link製のルーターは外付けアンテナにこだわりがあるのでどの製品も大きめだ。国内メーカーのどの家庭用ルーターより基本的にデカいのである。
そんなサイズ面の課題があり、先代のAX73は置き場に悩みながら使っていた。仕方なくリビングの棚に置いていたのだが、案の定、子ども怪獣にこだわりのアンテナをへし折られたのだ。
この経験もあって、壁面や高いところに気兼ねなく置ける小さなルーターがいいなと感じていた。
AX55を上から見ると、サイズ以外にもデザインも一新されていることが分かる。AX73は威圧感ある見た目と重量感があった。その反面、AX55は日本の住宅にも馴染むような、やや控えめな印象を受ける。
背面から見ると、AX55のコストカット面がわかりやすい。AX73で設けていたLEDやWi-Fi on/offのボタンが省略され、電源ボタンとWPSボタンのみというシンプルな構成。USB3.0ポートも背面にまとめられ、サイズを極力小さくする努力が感じられる。
先にも述べたが、自宅のAX73はリビングの棚に置いておいたこともあり、子ども怪獣にアンテナをやっつけられた。
そりゃあ、子どもの手の届くところに外付けアンテナ付きのルーターを置いていた私も悪い。アンテナを折られることも想像していた。だけど一気に4本も殺められるとは思わなかった。
アンテナを折られたものの、かろうじで土台の部分とつながっているので見た目こそ気にならないが、やっぱり、子どものいる家庭では手の届くところに外付けアンテナを持つTP-Link製のルーターは置かないのがベストだ。
AX55は一回り小型なので、本体背面に設けられた穴を使って時計のように壁掛けすることも容易い。賃貸だと壁に穴を開けることは難しいかもしれないが、Wi-Fiルーターをできるだけ高い場所に設置することは、子どもへの安全だけではなく、良質な電波を遠くまで飛ばせる利点からもぜひおすすめしたい。
AX73とAX55の性能を比較するため、それぞれの無線LANルーターを用いてLANとインターネットのベンチマークを行った。
- 測定1 LANの通信速度を iPerf3 で計測
- 測定2インターネット回線の通信速度をOokla SPEED Test で計測
無線LANルーター(AX73およびAX55)と測定PCの距離は直線で5m・障害物がなく見通しが良い状態とした。
無線LANルーターのWi-Fi設定は最も高速に端末と通信できるよう、チャンネル幅を160MHz、チャンネルを116chとなるように手動設定をした。Wi-Fiを自動設定のままにしておくと基本的には従来から使われている低速なチャンネル幅(20MHzや40MHz)が適用されてしまい、Wi-Fi 6 の一つの特徴である「高速通信」を発揮できない。
測定は5回実施し、測定結果のグラフにはその平均値を掲載している。
測定1 LANの通信速度
意外なことにフラッグシップモデルであるAX73よりもAX55のほうがWi-Fi速度が早い結果となった。803[Mbps]と750[Mbps]の僅差なので、誤差の範囲と思われる。この結果から分かることは、ルーターと端末が1:1接続であればAX73とAX55ともに同じ性能を期待できる。
AX73とAX55の大きな違いはWi-Fiのストリーム数だ。AX73は6ストリーム 合計5,400Mbps、AX55は4ストリーム 合計2,402Mbpsの性能を有しているが、この性能差が表れてくるのはWi-Fi端末の同時接続数が増えたときだ。端末数が数台に限られている環境下ならば、体感できる差はなさそうである。
測定2 インターネット回線の通信速度
こちらの測定は条件をできるだけ揃えるため、ルーターとPCを有線LANで接続した際のインターネット回線速度を計測した。
結果は、AX73の方が少々高速といえる結果となった。この差はルーターのCPU性能によるものが大きいと思われる。CPUの詳細は公開されていないものの、Wi-Fi端末の同時接続数80台を謳うAX73の方が高性能のものが使用されている可能性が高い。
AX55でも十分なインターネット回線速度を得られるので、安価なルーターに比べると大幅な性能アップが期待できる。
TP-Link Archer AX55の外観と性能についてフラッグシップモデルであるArcher AX73と比較しながらレビューを行った。
AX55の良さをざくっとまとめる。
- 高性能かつ安価なWi-Fi6・IPoE対応のルーター
- フラッグシップモデルのAX73に比べると小型で設置に困らない。壁面への設置もラク
- Wi-Fi端末の接続数が数台程度と少なければ、コスパの良いAX55で十分
一般的な家庭の場合、AX73はオーバースペックであり、AX55の性能で十分と総評する。あとはTP-Linkというメーカーと外付けアンテナが好きになれるかどうか。これに納得いくようであれば9,000円という価格で購入できるAX55は買いである。