ZERO AUDIOというブランドの 完全ワイヤレスイヤホン True Wireless Zero(型番:TWZ-1000 協和ハーモネット製)を2019年3月に購入し、今日まで1年近く、ほぼ毎日使い続けてきたので、良かった点と不満をぶちまけます。
結論から述べると、1万円台で購入できるワイヤレスイヤホンの中では小さなボディにも関わらずとても高音質で、自分好みな音を響かせてくれます。その一方で、音以外の機能面や設計が全くの期待はずれ。
今となっては早く次のイヤホンに買い替えたい気持ちでいっぱいになった、そんなお勧めできないイヤホンです。
長年、愛用したクリプシュ社のImage X10というイヤホン。2008年製ということもあり、イヤホンジャックでスマホなんかと有線で繋ぐタイプです。
このImage X10に惚れた要因は、なんと言っても絶妙な耳に対するフィット感と、小さなボディにも関わらず高音から低音まで繊細な音を鳴らすこのイヤホンは、耳が悪い私でも「おお~」とニヤニヤしてしまうくらい新鮮な音だったのです。定価は39,800円ですが、当時は3万円強で購入した記憶があります。
Image X10は、あまりのフィット感うえに、装着すると外界の音が完全にシャットアウトされます。電車内で自分と音楽だけの世界に潜り込んで、何度か降りる駅を通り過ぎてしまった、そんな淡い記憶が巡るイヤホンでした。
しかし、別れは突然訪れます。
ポケットの中に入れていたはずの、Image X10が見当たりません。いつか落とすかも…とは思っていたけど、たった4年で別れを迎えてしまいました。イヤホンは落とすもの。そう自分に言い聞かせ、その後は高価なイヤホンには手を出さず、正反対なお手頃かつ機能性を有するイヤホンを求めるようになりました。
通勤用は、JBLのBluetoothイヤホン「REFLECT MINI BT」。IPX4の防水仕様なので、運動しながら、お風呂に入りながら、通勤しながらの音楽を聞く上では、ちょうど良い使い勝手で、価格も1万前後というお手頃な製品でした。
ただ、音質は全体的に重くもっさりで、低価格イヤホンと大差はありません。最も甚だしかったことは、電波環境が悪いところで音がよく途切れる点。混雑した電車の中でスマホとBluetoothペアリングが切断される始末。
満員電車の通勤では聞くに耐え難いストレスフルなイヤホンだったのです。Bluetoothのバージョンは4.0(Class2)なので、性能面では悪いとは思えませんが、本当に音がよく途絶えました。
そんなイヤホンはとっとと捨てて、今流行りの完全ワイヤレスイヤホンに変えようと決心。しかしAmazonで「完全ワイヤレスイヤホン」と検索すれば、中華製品ばかりで、真にどのイヤホンが良いのかさっぱりわからず。価格.comで高評価のSONYのような大手メーカーの製品も、ボディが大きくデザインが好きになれません。
実物を確かめて選ぶために、ふらっと入店したビッグカメラで出会ったものが、このTrue Wireless Zeroです。完全ワイヤレスイヤホンはさすがにフリーな状態で展示されていません。セキュリティ対策が困難ですからね。
立ち寄ったビッグカメラでは専門の視聴コーナーがあり、店員に声掛けすれば希望のイヤホンを出してくれるとのこと。店員さんと相談し、1万5000円前後で音の良さに定評のあるこの製品をお試しさせていただくことに。
結果、その小型なボディから出る響きの良い中低音と、ヘドバン(笑)してもびくともしない理想に近いつけ心地を確かめて、即購入してしまいました。
まずは私なりに高評価であった音質を紹介させてください。
もともと使用していたBluetoothイヤホンの音質が悪すぎたせいか、このTrue Wireless Zeroの音の良さは素人目線でも分かりました。とはいえ、mp3のビットレートの違い(128kbpsと320kbps)が聴き比べられない程度の耳ですから、その程度の感想として受け止めてください。
このイヤホンの一番の特徴は中低音、とくにベースやウッドベースといった楽器特有の音域に艶があり、ポップスやジャズといった”しっぽり”系の音楽が特に気持ちよくリスニングできます。
加えて、中音~高音の音もはっきりしているので、アコースティックギターのアルペジオやドラムのスネアの音にも満足いくプロダクトです。
この製品にはイヤーピースがXS・S・M・Lの4種類が付属していて、一般的な耳の形であれば、フィット感に困ることありません。そのフィット感も相まって、遮音性はカナル型イヤホンとしては十分に高いです。
混雑した電車の中でも、小さなボリュームで音楽に浸れます。車内アナウンスのような大きな音は聞こえるほど良い遮音性能なので、通勤などの普段使いにはベストです。音漏れも常識的なボリュームなら気にしなくて良いと言えます。
この製品のキャッチコピーは”途切れに強い”。以前のBluetoothイヤホンで途切れ途切れの音で嫌気をさしてきた私には、まさに渡りに船なキャッチコピーです。この”途切れにくさ”の自信は以下の3点から形成しているものと思われます。
- Bluetooth 5.0 を採用していること
- Qualcomm社のTrueWireless Stereo Plusに対応していること
- LDSアンテナを採用したこと
Bluetooth 5.0 の寄与
このワイヤレスイヤホンはBluetooth 5.0 / Class1 を採用しています。5.0の方は音質や電波性能に寄与する部分では無いのでどうでもよく、Class1を採用というのが少々インパクトです。様々なWebサイトで解説されていますがClassは電波強度の違いを表します。
Bluetooth Class | 最大出力 | 想定される通信距離 |
---|---|---|
Class1 | 100mW | およそ100m程度 |
Class2 | 2.5mW | およそ10m程度 |
Class3 | 1mW | およそ1m程度 |
この表を見る限り、Class1だと100mも通信できてスゴいじゃん!と思うかもしれませんが、日本の電波法ではBluetoothやWi-Fiといった2.4GHz帯の小電力無線局は最大50mWを超えて出力できません。
したがって、このイヤホンも50mW以下に出力を抑えられていますし、メーカーのカタログ上の通信距離「見通し12m」を勘案すると、出力はもう少し低いでしょう。
一方で、1万円台のワイヤレスイヤホンが Bluetooth5.0 / Class2の採用が多いことを考えると、Class1を採用したこのワイヤレスイヤホンの途切れにくさはアドバンテージでしょう。そのあたり、こちらのサイトが詳しく解説されていました。
QualcommのTrueWireless Stereo Plus に対応
第2の特徴は、SoCにQualcomm最新のQCC3026を使っていること。なんでも、このSoCで利用可能なTrueWireless Stereo Plus(以下、TWS Plusと略します)という通信方式は、左右それぞれのイヤホンとスマホが個別に通信できるため、従来よりも途切れにくい方式を取れるようです。
ただ、このTWS Plusは注意点があり、 Snapdragon 845 以上のSoCを搭載したスマートフォンのみ機能します。 Snapdragon 845 はAndroidのハイエンド機のみで使用されているため、そもそも対応機種が少ないのが実情です。
私は Snapdragon 845 のスマートフォンを保有していたので、TWSを運良く体験できたのですが、よくよく調べないと分からないことですし、そのような詳細はWebサイトでは目立った記載ありません。
加えて、最大の問題点は、このワイヤレスイヤホンを購入した時点のファームウェアでは、TWS Plus にそもそも対応していませんでした。
2019年10月にリリースされたファームウェアでTWS Plusに対応したのですが、それまでは途切れに強い?TWS Plusの恩恵を全く受けらないにも関わらず、Webサイトでは堂々と”途切れに強い”を謳っていてもよいものなのか。正直、誇張表現にも程があるのではないかと思いました。
ファームウェアの開発が間に合わなかったのか、理由は分かりませんが販売時点でTWS Plusに対応していないことを真摯に購入者に公表しない姿勢は、信頼を落とすとしか考えられません。そんな些細なことを1万円台の製品に期待すんなよ、と言われても仕方ありませんが、この問題に気付いたときは落ち込みました。
LDSアンテナの採用
最後に、BluetoothのアンテナがLDSという製造技術を用いて、理想的で高感度な形になっているとか。調べてみると、多くの完全ワイヤレスイヤホンに採用されているので、電波を途切れにくいように改良するためには一般的な技術なんでしょう。
不満ばかりぶち撒けてしまいましたが、価格.comの評価はそんなに悪くないのです!どれだけ音が途切れにくいのか、物は試しと朝の満員電車(混雑率190%超)で試すことに。スマホ側はaptXとTWS Plusでペアリングしていることを確かめました。
以前のBluetoothイヤホンでは電車がホームに来るとパンダグラフのアークでブツブツ途切れ、電車の中でもブツブツ途切れ、最悪なときにはペアリングまで切断されてしまう状況でした。一方で、True Wireless Zeroは全く途切れません。
1年使って分かりましたが、全く途切れないは言い過ぎでした。途切れさせることもできます。カバンの中にスマホを入れ、かつ周囲の人との密着がキツイ状態の場合、イヤホンまでの電波強度が弱くなるのでブツブツと途切れます。
途切れるといっても、少しの間なのでストレスは少なめ。そもそもカバンじゃなくて上着のポケットにスマホを入れておけば途切れませんでした。満員の電車内ではズボンのポケットにスマホを入れても途切れることはあります。
TWS Plusは実際どうなの
では、イヤホンのファームウェアを更新して、TWS Plusが無効から有効になったらどう変化したのか?正直なところ、ううぅ~ん。こんなものかな…と唸ってしまうほど、違いが顕著に分かりません。
電車内の混雑が度を越すと途切れますし、そのときは片耳だけ途切れるのではなく、両耳同時に途切れます。
感覚論で、途切れにくくなった気がするし、途切れるときでも「ブツッ」の雑音がマイルドになったなぁと。そんなふわふわな感想で申し訳ないですが、私が感じ取れた評価はそんなものです。
TWS Plusで劇的に音質や通信品質が変わった人は居るのでしょうか。教えてください。
本当は温厚な性格だと思っていますが、このイヤホンには毎日イライラさせられています。それは、ケースに入れても電源が切れないことです。
このイヤホンは付属のケースに入れると、本体側の視認性の悪い白色LEDが光って電源を切れたことを知らせてくれます。しかし、金属端子の接触が悪いためか、私の右側のイヤホンはしぶとく電源が切れません。
ケースの中で、右へ左へとそおっと捻って、LEDが白く光ったところでようやく電源が切れた…と思ってケースを閉じます。しかし、暫くたつと、スマホのBluetoothペアリングマークが悪魔のように現れます。つまり、ちょっとしたケースの振動でイヤホンの電源が入ってしまうのです。
この問題のせいで、スマホに電話がかかってきた際に、ケースに閉まったはずのこのイヤホンとペアリングされていていることに気づかず、「もしもーし、もしもーし、あれ、聞こえんやん…。あぁ、またこいつ(イヤホン)か…」と何度も電話の相手方にご迷惑をかけました。
さて、メーカーWebサイトを見ると、目立つところに対策方法が記載れています。よほどサポートに文句が来ているのでしょうか。
結論を述べると、私の場合はこの対策方法に記載されている通り、入念に金属端子の清掃を行いました。しかし、症状が改善されることはありませんでした。そうだよね、買ってから数ヶ月で端子がひどく汚れるなんてあるんでしょうか。ただの設計ミスなのではないでしょうか。TWS Plusの件といい、ダブルで面食らいました。
もう、悪い意味で(電源)が切れないイヤホンは使えないので、ダメ元でメーカーのサポートフォームに修理を依頼しました。翌日に返信があり、メーカーまで送って欲しいとのこと。
修理を依頼したところ、新品交換になりました
メーカーにて症状が確認されたとのことで、新品交換になりました。故障品を送付して数日後には商品が返ってきたので、かなり早急な対応をしていただけた様子。メーカーの対応は文句なく良かったです。
交換後、2週間くらい使っていますが、電源が切れないといった不具合は発生していません!このまま問題なく使い続けられることを願うばかりです。
このイヤホンを修理に出している間、他のワイヤレスイヤホンの購入を検討すべく家電量販店で視聴を繰り返していました。
しかし1万円台という価格帯では、耳へのフィット感や音質でTrue Wireless Zeroより満足できるものってなかったんですよね。2万円以上出せばノイキャンや外音取り込みといった付加価値がついてきて、選択肢は広がるのですが、個人的にノイキャンは不要と感じました。
1年前に家電量販店で出会って、トキメキで買ってしまったTrue Wireless Zeroですが、事前にSNSで情報収集してから購入すべきでした。Twitterを見てみるとこのイヤホンとiPhoneの接続にはさらに悪い不具合が起こっているようです。
私は新品交換から返ってきた後は不満なく使えていますが、 あまり万人にお勧めできるイヤホンとは言えません。
それでも1万円強の価格でTWS Plusを体験できるコスパだったり、耳へのフィット感は満足いく製品なので、興味のある方はどうぞ!
新品交換した後、しばらくは問題なく使えていましたが、2ヶ月経ったときからケースにイヤホンを入れても充電されにくくなってきました。
やっぱりまたか、と思いつつ3ヶ月経った今では、元の「電源が切れない」症状に元通りです。以前の症状と同様で、右側のイヤホンが切れにくい。
推測ですが、結局のところこのメーカーさんは、イヤホンの電源が切れにくい問題を既知としながらも製品に何ら対策もせず、同じ新品を送り込んできたのだろうな…と。とても残念な気持ちになりました。
もう後は、接点復活剤でも吹き込むしかないかな。