ベンチマークを回した新PCと旧PCのスペックは次のとおりです。どちらとも、BIOS設定はデフォルトで、オーバークロックなしの状態で比較しました。旧PCのCPUがミドルレンジのCore i5-2500Kなのは、比較対象としてはあまりよろしくないですが、ご愛嬌ということで。
新PC | 旧PC | |
---|---|---|
CPU | AMD Ryzen 7 2700X | Intel Core i5-2500K |
マザーボード | ASRock B450 Gaming K4 | GIGABYTE Z68A-D3H-B3 |
メモリ | G.Skill F4-2666C19D-16GNT (計16GB) | DDR3 @ 1600 MHz(計12GB) |
グラフィックボード | Palit GeForce GTX 1080 Super JetStream | 同左 |
ストレージ | Silicon Power Slim S55 2.5″ 960GB | 同左 |
電源 | Antec NeoECO Gold NE750G | 同左 |
OS | Windows 10 64-bit (1809) | 同左 |
RyzenとSandyのCPU性能比較
まずはCPUの性能を純粋に比較計測できるCINEBENCH R15の結果です。
8コア16スレッドのRyzen 2700Xと、4コア4スレッドのCore i5-2500Kでは、コア数・スレッド数ともに差がありすぎて、結果に大きく反映されています。それにしてもスコアが4倍差もあると驚きですね。
とはいえ、Windowsの起動スピードやブラウジングなど通常の利用などでは体感できるスピード差はなく、どちらも「通常使い」では快適です。あくまで個人の感想ですが。
さて次は、今回PCを一新した主目的とも言える動画エンコードの測定を行いました。普段から愛用しているペガシス製TMPGEnc Video Mastering Works 6(通称:TVMW6)を用いたH.264エンコードの比較結果です。測定条件はすべてデフォルト状態で、動画のリサイズやフィルタ等は施していません。
グラフの上から3つがソフトウェアエンコードの結果で、NVENCと表記している下3つはNVIDIA製グラフィックボード(Geforce GTX 1080)を使ったハードウェアエンコードの結果です。
ソフトウェアエンコードではCPUをフル活用するだけあり、CINEBENCH R15とほぼ同程度の性能差が出ています。特に4K映像のエンコードでは、Core i5がたったの3.1FPSしか出なかったのに対し、Ryzen 7 は11.6FPSと、約4倍高速化されています。エンコードの待ち時間としては我慢できる程度のスピードとなっているのは素直に嬉しいです。
またハードウェアエンコードについても、CPU性能への依存が若干ながら見られ、エンコード速度が向上しています。それにしても、ハードウェアエンコードの処理速度は偉大ですね。4Kエンコードの場合でも余裕で完了を待つことができます。
H.265/HEVCエンコードの測定も行いました。 H.265コーデック圧縮率は、H.264の半分のビットレートで同等の画質を実現出来るとされています。つまり、H.264に比べデータ量を半分程度に抑えることができる優れものですが、その分エンコード時間がめちゃくちゃ掛かります。
H.265は大変手間(待ち時間)のかかるエンコード方式ですが、スマホなど記憶容量が限られた端末に映像を移す際はH.265形式の動画であればデータ量の削減につながります。最近のスマホであればVLCメディアプレイヤーといった再生アプリを使えば、余裕でH.265 1080pの動画がヌルヌル再生できるスペックを有しています。スマホ用動画を作るのであればH.265がお勧めです。もちろんPCへの永久保存版動画でも品質面ではピカイチです。
H.265エンコードの比較結果を見ると、ソフトウェアエンコードはH.264の性能比に比べて、若干低下しています。 1080pであれば23.3FPSと十分処理を待てる範囲内ですが、4Kエンコードの6.2FPSだと処理を待つのは厳しいかな。1時間の映像をエンコードするのに5時間近く掛かる計算です。
ハードウェアエンコードでは4Kでも30FPSを超えてますし、実用できるレベルです。とは言え、CPU新旧による性能差はそこまで大きくないので、ハードウェアエンコード(NVENC)を高速化させたいなら、CPUよりもグラフィックボードを新しいものに交換するのが最も良いでしょう。
フリーながら高機能なエンコードソフト、HandBrakeを用いた比較も同様に行いました。こちらも全てデフォルト状態で動画をリサイズせずにエンコードした速度を比較します。
結果から見えることは、特にHandBrakeはTMPGEnc Video Mastering Works 6に比べてRyzenとCore i5との性能比が大きいことが分かります。これはHandBrakeがエンコードに利用しているFFmpegのRyzen向けチューニングが優れていると判断できます。1080pのソフトウェアエンコードではCINEBENCH R15での性能比と近い3.8倍速を出していますし、ハードウェアエンコードでも性能比が大きいです。個人的にはペガシスもっと頑張れと、 TVMW7に注力するんじゃなくて、ソフトウェアのCPU最適化に精を出して欲しいですね。
RyzenとSandyのゲーム性能比較
続いて、ゲーム性能の比較。予想では大差は出ないと思い込んでいましたが、結果は歴然でした。
定番ですが3DMarkのベンチマーク結果です。こちらは4Gamer.netのGPUベンチマークレギュレーションとほぼ同じ条件で測定しました。※レギュレーションと異なるはTime SpyのExtremeが抜けています。
Fire Strikeは1920×1080の解像度で実行する「Normal(無印)」と、2560×1440解像度の「Extreme」、3840×2160解像度の「Ultra」という3種類があります。結果は、解像度が低いNormalでは性能差が大きくなるものの 、ExtremeやUltraでは少しの性能向上といった程度でした。
Fire StrikeのNormalとUltraのスコア詳細を見ると、NormalではPhysics(CPUを使った演算)とComboned(CPUとGPUによる総合演算)スコアが大きく性能向上しています。一方、UltraではCombinedスコアが伸びておらず、その分Totalスコアに反映された感じです。これはCPUよりもグラフィックボードの性能がボトルネックになっていていることが分かります。
フルHD以上の解像度でFPSといった高負荷ゲームをしたいのであれば、CPUに金を掛けるよりワンランク上のグラフィックボードを購入する方が、結果として良くなるということが分かりました。簡単に言っちゃいますが、グラフィックボードのワンランク上というと価格面では1.5~2倍くらい跳ね上がるし、難しい判断となるのは間違いありませんが。
最後に、ゲームベンチマーク定番のファイナルファンタジー14 紅蓮のリベレーターの結果です。新旧どちらの環境でも「非常に快適」であることは間違いないですし、Sandyおじさんでもストレスなくプレイできるレベルですね。
SandyからRyzenに乗り換えた経緯、PCの組み立て、ベンチマークまでと長々書いてきました。結局のところ「Sandyおじさん辞めてよかったの?」と聞かれると、
モチのロン
でございます。だって動画エンコードがSandyより3倍以上のスピードで出来るのですから、これ以上は望みません(しいて願うのはTVMW6のRyzen向け最適化! )。しばらくは状況に応じてソフトウェアエンコードとハードウェアエンコードを使い分けて行く感じですね。スマホで動画を見るだけならば、ハードウェアエンコードでも十分です。
おまけ:ベンチマークを初めて記事にしたんですが、グラフ作る作業だとかとても大変でした。よく4Gamerとかあんなに頻繁に出来るものだなと思ったりしますが、PCのスペックを決める上でもかなり参考になっています。私も負けじと細々と、ニッチなところで同じ自作PCユーザーに貢献できれば、という所存です。
後記
Ryzenに乗り換えた自作PCですが、NVMe(PCIe3.0x4)のSSDに対応したマザーボードでありながら、予算が足りず旧式のSATA SSDを使いまわした事を恥じていたのです。
その後1年が経過し、NVMe SSDの値段も大きく下がったため、エントリー向けのNVMe SSD「WD SN550」を購入できました。2.5インチのSATA SSDから載せ替えた際の比較記事を書いたので紹介します。